緊急事態宣言(言葉だけ)で見殺しにされる

緊急事態が出された。

 

飲食店の営業は夜の8時まで。酒類の提供は7時でオーダーストップ。

テレワークの推進。通勤を7割おさえろ。

イベントは自粛までしなくていいから人数を制限しろ。

 

飲食店だけを狙い撃ちで悪者にしているが、1店舗1ヶ月で180万円を上限に補償するという。1日6万円。小さな個人営業のひとりでやっているような店にとってはうれしい話かもしれないが、世の中にはそういう店ばかりではない。アルバイトを何人も使って店を回していた店だったら6万円もらったところで焼け石に水の効果もないどころか、死刑宣告にしかならない。しかもこの補償金の申請方法だっていつ決まるのか。1ヶ月なんてすぐに過ぎてしまう。そのあいだにも家賃の支払いや借金の返済がある。でも営業することはできないのだ。個人事業主にとって地獄ではないか。

 

2020年7月~9月の法人企業統計調査によると、1回目の緊急事態宣言のあとの経済状態の一端が見える。前年同月比で、陸運業が39%マイナス。宿泊業は320.5%マイナス、飲食業だと320.1%マイナス。これは営業利益だ。すでに法人だけでも借金まみれの赤字経営になっているのである。個人事業主はこの統計には含まれないが、体力のない零細のお店がどれだけ苦しい状態であるかは誰でもわかる。

 

そこに追い打ちをかける緊急事態宣言。夜の8時を過ぎると町は暗闇に沈み、人もいなくなった。自民党は違反して営業している店の名前を公表するべきだとか、法改正して補助金の数倍になる罰金を取ってやろうとか、鬼としかいいようがない。じゅうぶんな補償を出して違反をなくすほうが合理的だという野党の意見のほうがまだ理にかなっている。それでも、ちょっと待て!

 

アルバイトやパート、非正規で働いて生活していた人はどうするのか?

このご時世、すぐに新しい仕事になんかありつけるものか!

 

お店の経営者だって多様な契約形態だ。補償金は彼らの上流にいる店の権利を持つ人々のところにまでしか届かない。実際に店を開けて働いていたマスターやママさんのところにまでお金はまわってこないケースもかなりあるはずだ。ましてやその下で働いていた人たちは、「失業者」としてもカウントされない。無一文で収入を絶たれてどこからも助けてはもらえないおおぜいの見えない人たち。コロナの感染爆発が彼らのせいだというのなら、自民党小池都知事も、エピデンスを見せてほしいものだ。コロナの感染経路のうち数%の1ケタにすぎない「夜の町」をこれ以上叩いても煙しか出ないぜ。ましてや罰則でさらに飲食店を追い詰めたがっている政治家、権力者ども!まずは、おまえら、パーティーやめろよ!どこまでバカなのか!

 

あまりに残酷で無慈悲な政治ではないか。

 

ところが、同じ法人企業統計調査によると、人員減少率は10億円以上の資本金の大企業で1.7%、2千万円以下の中小・零細企業で6.8%。賃金は前年と変わらず横ばい。家計調査報告でも2020年1月からプラス値で、10月には2%も増えている。

 

麻生財務大臣が、たった1回やったあの1人10万円の個人補償、あれは消費にまわらず貯金になってしまったから失敗だった、と言って物議をかもしたが、あながちデタラメでもなかったということなのである。半分以上の人たちは収入が減っていない。この人たちは、「会社員」なのである。(公務員や民間を問わず、正規雇用のひとたちという意味で)

 

企業は利益の悪化を「非正規雇用」の人たちの首切りでしのいだから、「会社員」の収入には大きな変化はなかったのだ。先ほどの統計でも見られたように、大企業より中小・零細企業の方が人員減少の数値が大きい。小さい会社ほど「非正規」の割合が大きいということがわかる。経営悪化の深刻な中小・零細は「非正規雇用」をクビにして生き残りをはかったという実態があらわれている。そしてこの「非正規雇用」の人たちは路頭に迷ってもそもそも「労働力」としても数えてはもらえない人々なのである。もちろん、雇用保険雇用調整助成金などの恩恵からもこぼれ落ちてしまっている。大企業であれば業績が悪化しても銀行などからの資金繰りさえクリアできれば役員や正社員の賃金は払えるし、休ませれば雇用調整助成金で給料の代わりを出せる。だが、フリーの請負や派遣などにこれらの制度は何の意味もないということなのである。

 

スガや麻生、二階の強盗キャンペーンは言うまでもなく、自民党公明党などの与党政治家はもちろんのこと、野党にとっても、これらの「負け組」の人たちが見えているとは思えない。ましてや、あらゆる収入を絶たれて、家賃を払うことさえできなくなって路頭に迷う「住所」を持たない人々が、1人につき1つずつ命のある人間だという認識、そもそも認識さえがはたしてあるのかどうか。

 

この冬、寒さで死ぬのか、飢えて死ぬのか、コロナで死ぬのか、絶望で死ぬのか、正規雇用で守られた「会社員」ではないすべての国民は、どれかを選んで死ねと言われている。そんな政治家を選んで権力を与えてしまったみなさん、自殺者の数字を他人事のようにスルーしないでください。あたたかい部屋で家族でウーバーやアマゾンでお取り寄せのおいしいものをいただきながらでけっこうですので、コロナと同じくらいの人災でたくさんの人が死んでいることを記憶してください。そして、今から予想しておきます。こんな「緊急事態宣言」ではコロナの感染爆発にはまったく効果がない。1ヶ月後も、感染者数にさほどの改善もみられなかったとガッカリしましょう。それが私たちの選んだ政府の仕事の結果なのだと受け入れるしかありません。医療崩壊はもうすぐなのです。まじめにやる気をだしてほしいものです。政治に。